Salih Guler Photography
“夏休み冬休み春休み友達が消えて教室が空っぽの中わたしという存在だけがアイスクリームを食べている。遠いところでセミが鳴いて、山が変わらないのに昨日とは違う色をしている気がする。ひかりや時間は止まりもしないから、置き去りにされる感覚だけがいきるということと知って、ビーチサンダルとはだしのすきまに紛れ込んだ砂が、この町のわたしに似ていると思った。算数の宿題をするあいだ、手のひらにぴたぴたと汗みたいなものがたまって、国語の宿題をするあいだ、扇風機がくれた風はいつまでもわたしの髪型をこわす。どうぶつを庭で見ないから蚊のことはきらいだから虫が好きなともだちのことバカだとしか思わない。曜日や暦のことを忘れていくなかで、白くて細い張りつめた弦が、世界とわたしの間にあって、ときどき振動するのを見ていた。風にも揺れた、山の色にも揺れた、空の色が変わっていくこと、雲の様子にも震えて、わたしはここからどこにもいけず、それでも今夜もよくねむる。 「10歳の詩」最果タヒ”
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(via tahi)
